kyuinn’s diary

読書感想を個人的につづるブログです。

19の巻~『外資系アナリストが本当に使っている ファンダメンタル分析の手法と実例』

 

今回はまた投資関係の本に戻って書きたいと思います。

外資系アナリストが本当に使っている ファンダメンタル分析の手法と実例

外資系アナリストが本当に使っている ファンダメンタル分析の手法と実例

 

 

◆なぜこの本を選んだか

最近時間があるので投資の研究を深めようと思っていて、集中的に読んでいます。 おそらくこのまま読む冊数を増やしたところで正解の投資の方法というのは存在しないとは思うのですが、いろんな方法を比較して自分にあったものを選びたいと思っています。

 

◆本の感想および今後の実践について

まず株価予測のための主要な計算ファクターとなる資本コストについて

実際の株式投資の実務の裏側では、株主資本コストの水準について、「8%or6%」を軸にして、なんとなくリスクが高い場合はそれより2〜4ポイントくらい上 かな、というように“鉛筆をなめている”場合が多い  

 

CAPMに基づく資本コストの決定は変動が大きいため実務で使えないため、このようになっているらしい。個人的にはあまり納得していないが、事実としてとりあえず受け止めようと思う。

 

逆にいうとこれが機関投資家におけるほとんどの実務なのであれば、CAPM理論との差を利用した裁定取引ができるかもしれない。のでこの差は今後も注目したいと思う。

 

この著者は株式評価の手法としてDDMを推奨しています。 

DDMは少数株主による投資だからこそ、特に意味のある 

 

DDMは、会社から還元される将来の配当額を予測して、それを株式価値の推定に利用するものだからです。配当をコントロールできてしまう場合には、意味をなさないということ 

個人的にはこのDDM推しも納得のいかないところ、まず一点目としてDDMでは自社株買いによる還元が無視されていること、二点目として配当せずに留保された利益が自己資本を増大させ、ROEを低下させる可能性がある点を無視しているのではないかということである。

 

確かに真に少数株主であれば、投資対象会社の配当をコントロールすることは難しいといえるが、機関投資家であれば議決権を握るのは無理だとしても5%程度の株を買い占めて、間接的に投資対象先にプレッシャーをかけることはできるのではないか。

 

そう考えると、DDMよりFCF for Equityの方法で株価を算出するほうが個人的には良い気がしている。

 

使い道のないキャッシュであったとしても、ある程度の部分までは株主に帰属するキャッシュとして評価することも大切 だと思います。実際の配当性向が40%だった場合、100%は高過ぎだとしても、場合によっては60%程度の配当性向を想定として

一方で、自分の懸念点については、将来の予想配当額を高めに設定することで回避する方法が提案されていた。そうなるとDDMといっても実際はFCF for Equityとあまり差異が無いということになるだろう。

 

ここからは自分が今回一番勉強になった会社の将来利益予測のやり方について

 

 

ある業界を考察する際には、「市場全体の規模が非常に大きい産業なのか、あるいは非常にニッチなのか」 や、「業界全体として成長しているのか、成熟もしくは衰退しているのか」 については必ずチェックしておく必要があります。 

競争環境はどうでしょうか。お好み焼き市場は、ある程度大きなシェアを占めるチェーン店がないので、牛丼のように大手チェーン店が値下げ合戦をするといったことが起こる市場ではなさそう

 

まず業界全体のチェックをするべきであるというコメント。このようなコメントを見ると、証券アナリストの仕事というのは戦略コンサルとあまり変わらないのでないかという気がして嬉しい。自分は戦略コンサルになりたいわけではないが、彼らの持っているスキルには興味があるので、株式研究を進めていくことがそのスキル獲得につながるというのは非常によいことだと思ってます。

 

加えて、企業の沿革や経営陣の経歴等から、 その企業における過去の転換点を把握 し

 

 

企業の今後の弱点、ビジネスモデルを把握するために、会社の沿革/経営陣の変化と財務結果がどのように結びついているのか、あらかじめ大事だと説いています。

 

利益変動の要因は、(1)価格効果、(2)数量効果、(3)変動費効果、(4)固定費効果 の大きく4つに分解することができ


将来利益の予測のためには過去の利益変動を明らかにする必要があるとしています。

 

実際にどのように利益増減分析をすればいいのでしょうか。費用を固定費と変動費に分けるには、有価証券報告書に載っている「製造原価明細書」 や損益計算書の注記にある「管理費の内訳」 を使うのがいいと思います。それぞれの項目ごとに「費用額」と「対売上比率」を時系列にエクセルに入力して、関係性を分析 

これはやったことがないので、どこまであてになるのかわからないが、ざっくり重回帰分析で固変分解する方法でもよいのではないかという気がしている。

 

最後はリスク分析と分析検証について

私が着目しているのは 事業環境の構造的なトレンド

検証で困った時は、 ビジネスモデルの理解をもう一度行うこと も大切です。私は、(1)企業の強み、(2)参入障壁の持続性、(3)成長ポテンシャル の3点を、特に意識して検証するようにしてい 

構造的トレンドを将来にわたって予想するのは不可能なので、できても直近5年が限界なのだと思う。一方で5年より先はディスカウントファクターのおかげで利益が直近株価に与える影響も少ないので、ターミナルバリューが株価にあたえる影響割合をみて、ストレステスト的にチェックしていくのがよいのではないか。 

 

◆その他 

全体的に読みやすく特に後半の業界分析からの個別株分析へのドリルダウンはとても勉強になりました。DDMを使うことの妥当性についても自分の中で課題として研究していきたいと思っています。

 

作成時間:40分