13の巻~『生涯投資家』
久々のブログ更新です。
前回のブログに書いたように、バランスをとることが下手糞な僕は英語学習一転突破の生活を送り、完全にまともな読書をしておりませんでした・・・
今回は海外出張の関係で、移動時間に読書する時間が確保できました。
一方で仕事のほうでも、書き物案件の仕事が増えていきそうな兆候があるので、ブログ更新はウォーミングアップには丁度よさそうです。
久しぶりのネタとなる本は以下にしました。
生涯投資家
著:村上世彰
◆なぜこの本を選んだか
著者について説明する必要はないでしょう。僕は彼がアクティビストとして活躍していた絶頂期の時は大学生で、彼の行為は好意的に受け止めていました。
当時は彼へのバッシングは強く、彼はそれを気にすることなく振舞っていたわけですが、その彼の意思を継ぐ娘が相変わらず周りの人々からいらぬ中傷を受けているのを見て考え方を変えたようです。つまり、世の中の人にもっと彼の考え方を知ってもらう努力をするべきと考えたとのこと。
僕は彼の思想に昔から共感していたので、本の内容の大半に新鮮さは無かったのですが、簡単に気になった点をまとめようと思います。
◆本の感想および今後の実践について
内容の大半は株式会社のあるべき姿についてです。
まず、株式会社が上場をする目的ですが、本義的には株式市場を利用しての資金調達を行いやすくするためなわけですが、一方でそれには一定の義務が付きまとうよね、というのが彼の主張です。
上場とは、私企業が「公器」になることなのだ
公器になった企業は決められたルールに従って、投資家の期待に応えるべく、透明で成長性の高い経営をしなくてはならない。企業は株主のために、利益を上げなければならない。それが嫌なら、上場をやめてプライベートカンパニーになるか、利益を資金の出し手に還元しない非営利団体として社会貢献を主軸に置く、などの選択をするべきなのだ
上記の主張は本来であれば、常識レベルのことなのですが、彼が活躍していた時はその考え方はまだまだ薄かったわけです。日本では上場企業であるということに一定の箔がつく文化があるので単純な箔付のために上場を維持する会社もあります。
私は、どんな企業でもMBOをすればいいと言うのではない。今後の事業に自信があり、自社の株価が割安であると感じ、資金調達については銀行借入余力が十分にある場合に限る
要するに株式市場を今後一切利用する可能性がない場合ですね。
その後、彼は投資家というのがどういう役割を果たすべきなのかも記載しています。
投資家は、リスクとリターンに応じて資金を出し、会社が機能しているかを外部から監視する。経営者は、投資家に対して事業計画を説明し、社内の人材や取引先などをマネジメントして最大限のリターンを出す
これもコーポレートガバナンスの基本的な考え方ですね。自分は仕事でリスク管理をやっているので、非常に馴染みがありますが、浸透が足りてないぁと思うときは多々あります。
コーポレートガバナンスが効いていない日本の会社に対して投資家という立場からそれを是正するために、彼はファンドを立ち上げたわけですが、外部の資金を入れてしまったことから葛藤もあったようです。
資本市場のあるべき姿を追求するという独立時の目標と、最大限のリターンを出さなければいけないという投資家からの要求は、時に相反することがあり、大きなジレンマとなってしまったのだ
ここ先は他ではあまり見ない主張だと思うのですが、彼はコーポレートガバナンスを進めるには累積投票制度を導入するべきだと主張します。
累積投票制度を使うと、少数株主でも取締役を送り込むことができ
アメリカでは、五%ほどの株を取得すればほぼ確実に取締役を送り込むことができ、上場している企業の側は、株主から提案された取締役を受け入れる覚悟がなくてはならない
日本でも社外取締役への注目が高まっていますが、現実では社内取締役と関係性の深い独立性の高くない取締役が選ばれる傾向が高いことから、累積投票制度を活用して株主提案でより独立性の高い取締役を送り込むことを考えているようです。
これは非常に興味深い主張でしたね。
◆その他
彼が投資家になったのは、上記の志の他にも彼の家庭環境によるところも大きいようで、非常に納得のいくところでした。
彼の人生には辛いことが多くあったのは承知の上ですが、彼の生き方は非常にうらやましく、自分も投資家になりたいなぁと思わせてくれる良い作品でした。
そういえば最近知ったのですが、欧米では株主の議決権代理行使サービス会社なるものがあるみたいですね。個人投資家から委任状だけ取り付けて、彼らの利益のために議決権を代理行使するみたいです。この本を読んでそのことを思い出し、そのようなビジネスに携わるのもいいなぁと思いました。
作成時間:1時間13分